魚沼市(新潟) 足沢山(1107.0m)、内桧岳(1054m) 2024年4月13日(土)  カウント:画像読み出し不能

所要時間 2:34 国道252号線末沢ゲート−−3:26 国道を離れる−−3:29 JR只見線−−3:32 斜面取付(標高360m)−−3:51 送電鉄塔(標高490m)−−4:37 711.2m三角点肩−−5:11 822m標高点−−5:33 930m肩−−5:32 残雪に乗る(標高1000m)−−6:09 足沢山−−6:41 1084m峰−−7:19 1010m鞍部−−7:30 1050m峰−−7:39 内桧岳 8:15−−8:25 1050m峰−−8:33 1010m鞍部−−9:15 1084m峰 9:26−−9:52 足沢山 10:18−−10:29 残雪終了(標高1000m)−−10:37 930m肩−−10:52 822m標高点−−11:15 711.2m三角点肩−−11:40 送電鉄塔(標高490m)−−12:10 正規の尾根に戻る−−12:13 JR只見線−−12:17 国道252号線(休憩) 12:40−−13:43 国道252号線末沢ゲート

場所新潟県魚沼市
年月日2024年4月13日(土) 日帰り
天候
山行種類残雪期の藪山
交通手段マイカー
駐車場国道252号線末沢ゲート付近の路側に駐車可
登山道の有無基本的に登山道は存在しないが、尾根取付〜送電鉄塔(標高490m)は送電線巡視路あり。送電鉄塔以降は割と明瞭な踏跡が延々と続く。ただし標高が高くなるほど雪が消えた場所の踏跡は潅木藪に邪魔されて藪漕ぎが厳しく、足沢山以降は残雪が使える時期でないと相当厳しいだろう
籔の有無雪が消えた区間は主に灌木藪で笹は少ない。尾根取付〜足沢山間は明瞭な踏跡ができていて藪漕ぎは軽いが、足沢山以降は踏跡はあっても薄く藪が濃くなる。1084m峰〜内桧岳間も灌木藪だがごく一部を除いて藪は比較的薄く、雪が完全に落ちても行けそうな気配だった
危険個所の有無1084m峰〜内桧岳間の稜線は北側が切れ落ちているため、絶対に北側には滑落、転落しないこと。南斜面は比較的傾斜が緩い場所が多く安全であるが、たまに岩場があるので注意
冬装備ロングスパッツ、ピッケル(無くても可だがあると藪回避で強引なルート取りが可能)、10本爪アイゼン(未使用)
山頂の展望足沢山、内桧岳のどちらも大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード。往路のゲート〜尾根取付まではGPS電源入れ忘れでログ欠損
コメントコロナの病み上がり直後に毛猛山塊で唯一未踏だった内桧岳に挑戦した。ルートは毛猛山と途中まで同じで1084m峰で西に派生する尾根に入って往復。14年前に毛猛山に登ったときよりも半月早く入ったのに当時より残雪が少なく、雪がコンスタントに利用できるようになったのは標高1000m付近から。14年前よりも道が濃くなって夏道に近付いてきたような? 内桧岳に続く尾根は雪が使えたのは1/4〜1/5程度で大半が潅木藪漕ぎ。でも藪は思ったよりは濃くなく、完全に雪が無くなっても時間をかければ往復可能だと思う。内桧岳山頂は高い立木は皆無で大展望


足沢山から見た1084m峰〜内桧岳の稜線の中盤〜後半区間。矢印の2箇所が急傾斜だが藪で安全に通過できる


ゲート前の路側に駐車。道幅は非常に広い 末沢ゲート。昔は施錠されていなかったのだが
末沢発電所入口の踏切 国道を離れて冬枯れした法面を下る
只見線の線路に乗る 鉄橋を渡る。線路横に歩道?あり
鉄橋を渡ったら斜面に取り付く 最初は尾根がはっきりせず適当に登る
小尾根に乗ると目印が落ちていた 尾根上に道らしき筋あり
送電鉄塔 送電鉄塔付近は傾斜が緩く尾根を見失う
適当に登るが灌木藪っぽい 尾根に乗り再び踏跡登場
674m峰の標石 711.2m三角点
標高710m平坦部のみ残雪がある 標高750m付近。ようやく明るくなってきた
標高830m付近 午前5時20分に太陽が顔を出す
標高890m付近 標高890m付近のボトル
標高930m付近から見た太郎助山 標高970m付近。一時的に雪が使えた
標高990m付近 マンサクの花
標高1010m付近でやっとまとまった雪に乗る 標高1010m付近から足沢山を見上げる
古いスノーシュー跡。盛り上がっている 自分の影。今シーズン初の麦わら帽子
足沢山直下 足沢山山頂
足沢山から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
足沢山から見た村杉半島の山々。来年は優先的にチャレンジしたいが年齢と共に体力が・・・・
足沢山から見たこったが山 こったが山北側直下の廃屋群
2週間前に歩いた「あおり山」南側の稜線 足沢山から見たあおり山
1084m峰に向かう 標高1080m付近で雪が切れて灌木藪漕ぎ
標高1070m付近 軍手が落ちていたので枝に刺しておいた
鞍部を通過して標高1070m付近で東側の残雪に乗る 藪を突破して残雪に乗った。やっぱり雪は良い
面倒なので細い「廊下」を渡った 中央のピークが1084m峰
1084m峰直下は岩場 南側に行き過ぎてから1084m峰へ向かう
雪が切れると灌木藪 1084m峰から見た内桧岳に続く尾根。雪は少ない
灌木の上を歩いた跡。人間ではなく動物かも 低く枝を伸ばした五葉松が厄介
人の手が入った形跡 標高1070m付近。微小ピークを次々と越えていく
標高1060m付近 標高1050m付近
標高1050m付近の屈曲点は灰色の岩の上 このピークの西側直下が短いが急傾斜
急傾斜箇所。藪で確保可能 標高1040m付近
1020m鞍部手前の境界標石 1020m鞍部東側が一番急な個所
1020m鞍部西側 残雪の上は灌木藪
1050m峰から見た内桧岳 1030m鞍部付近から雪に乗る
内桧岳山頂直下で雪が切れる 内桧岳山頂。背景は桧岳
内桧岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
内桧岳から見た太郎助山〜桧岳
内桧岳から見た越後三山方面
下山開始、と言っても足沢山までは登り返し 1050m峰のてっぺん
1050m峰から見た足沢山〜百字ヶ岳〜内桧岳
1050m峰からの下り始めは藪が濃い 1010m鞍部を見下ろす。鞍部の東側が急な個所
1010m鞍部東側の急傾斜区間 劣化したロープが残置されていた。この右側を登った
急傾斜区間を登り切ったピークから北東を見ている 尾根屈曲点の岩峰から見た1084m峰、足沢山
標高1060m付近は南斜面の残雪を伝ってみた 雪が崩れた箇所で尾根に復帰した
雪が崩れた箇所は灌木藪が無かった 標高1070m付近で尾根に復帰
1084m峰への最後の登り 1084m峰てっぺん
1084m峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
1084m峰から見た太郎助山〜桧岳〜内桧岳
1084m峰から見た足沢山 毛猛山方面に一人の足跡あり
私は足沢山へ向かう 標高1070m付近で藪に突入
この照葉樹が一番面倒な藪 アイゼンで踏まれた枝の跡
標高1070m付近で雪に乗り藪から解放 足沢山再び
足沢山から見た毛猛山方面。肝心の毛猛山はここからはまだ見えない
足沢山から見た内桧岳山頂部 足沢山から見た飯豊。霞んで肉眼でかろうじて見える程度
下山開始 残雪帯の始まりで幕営単独男性とすれ違う
標高990m付近 ハンカチが落ちていたので枝に結んでおいた
標高930m肩から北東に延びる尾根を見ている 標高930m肩から北西に延びる尾根が正解
標高820m付近 今シーズン初のイワウチワ。たくさん咲いていた
カタクリも咲いていた 標高770m付近
標高770m付近で左に派生する枝尾根。引き込まれぬよう注意 標高710m付近
標高710m付近の目印 711.2m三角点
国道を見下ろす。除雪はかなり進んでいるようだ 標高640m付近。左の枝尾根に引き込まれるよう注意
標高640m付近 タムシバの蕾
標高が落ちるとこの目印が見られる 送電鉄塔付近のみ残雪登場
送電鉄塔 送電鉄塔から北西に延びる尾根にも道があるがルートミス
目印があるが鉄橋にはたどり着けない 標高440m付近
標高430m付近 ショウジョウバカマ
標高370mで末沢川沿いに出るが鉄橋が無い! ここでルートミス発覚 高巻きして正規の尾根に戻ることに
標高差50mを登り返して正規の尾根に乗った トラバースしてきた斜面
標高410m付近 イワウチワ祭り状態
巡視路?入口は鉄橋の根元だった 鉄橋の根元から尾根末端を見ている
鉄橋。次の列車通過まで2時間近くある 末沢川
鉄橋を渡り終わってすぐの斜面に取り付く 冬枯れした草の斜面
下ってきた尾根 傾斜が緩むと雪原登場
国道のスノーシェッドの日陰で休憩 今シーズン初のキクザキイチゲ
フキノトウ。それこそ山のようにたくさん出ていた 国道から見たこったが山
こったが山山頂部拡大。下界から見ても山頂直下の廃屋が確認できた
不明の建造物。おそらこったが山の採掘と関係があるのだろう 工事関係者だろうか。下っていった
こったが山に登った時に利用した送電線巡視路入口 国道から足沢山が見えた
スミレだが細かな種類は不明 紫色のキクザキイチゲ
末沢発電所。何故か稼働していなかった 末沢発電所に至る車道の踏切。車止めあり
末沢川右岸斜面には謎の鉄塔あり カタクリの群落
カタクリ タネツケバナっぽいが不明。アブラナ科だけは確実
ホクリクネコノメソウっぽい ここにも謎の鉄塔
スミレだが細かな種類は不明 年中閉鎖らしい踏切
末沢ゲート到着 路側が広いので駐車しても問題ない


 毛猛山塊の正確な定義は知らないが、おそらくは只見川と黒又川に挟まれた狭いエリアなのだと思う。この中には登山道がある山はおそらく無く、毛猛山を筆頭にマイナーな山が目白押しである。その名前からして毛猛山は昔から藪山愛好家にとっては憧れの山であったが、いつの間にかマイナー12山とかに選出されて登る人が多くなったようだ。標高は大して高くないが道が無く豪雪地帯に位置しており無雪期の藪は想像を絶するため、積雪期以外は登られることはまずない。

 その毛猛山は14年前の大型連休初日と次の日と1泊2日の幕営で足沢山、百字が岳、中岳、桧岳、毛猛山と一気に登ったが、内桧岳だけは尾根上の雪が完全に消えて山頂まで藪が出ていたため登頂を断念した経緯がある。昨年に土崩山と「こったが山」を登頂したので毛猛山塊の残りは内桧岳のみとなり、優先的に片付けたくなるのが人情だ。

 そこで4月の第1週の土曜日(6日)を狙った。これは国道252号線の除雪が例年だと4月1日に開始され、およそ1週間で毛猛山の取り付きとなる只見線の鉄橋まで除雪が完了して、往復10kmの国道歩きのラッセルが不要となるためだ。体力的にはこれは非常に大きい。

 前日の金曜日夕方に出発して国道252号線の途中の広場で仮眠を取ったのだが、何と夜中に急に発熱して外気温が+10℃近くあるのに2重のシュラフ+ダウンジャケットでも寒気がして眠れない始末。翌朝も熱が下がらず登山どころの騒ぎではないため1日休養して翌日チャレンジも考えたが、一向に熱が下がる気配が無くこのままでは車の運転自体が困難で自宅に帰れない心配が出てきた。少し症状が落ち着いてから帰途に着いたが、それでも途中で仮眠というか日向に駐車してダウンジャケットで寝袋に入って再び熱が少し下がるのを待った。車内はおそらく+30℃を越えていたと思うが、これでも悪寒が止まらなかった。

 どうにか自宅に到着したものの医者に行く余裕が無く日曜まで自宅で解熱薬を飲んで寝たきり状態に。月曜日にかかりつけ医に行ったらコロナと判明。私の場合、熱が酷かったがその他の症状はそれほど強くなく、水曜日に完全に熱が下がって木曜日に会社に行けたが、この時点で食欲は正常時の半分程度。最初の2日間はほぼ何も食えなかったので明らかに腹回りの内臓脂肪が減ってズボンがユルユルになっていた(笑)

 体重が軽くなるのは荷物が減るのと同じ効果があるのでうれしい限りだが、5日間も寝たきりだったので筋力低下が心配だった。木曜日に出社したら階段の登りで明らかに足が重く、これで内桧岳の藪漕ぎに耐えられられるのか心配になるほど。今回は日帰りにしては距離が長く藪での体力消耗を考慮すれば万全の体調で臨むのが当然であるが、短い残雪期を有効利用するためにも計画は変えないことにした。体力不足で失敗のリスクがあるが、そうなったら翌週か来年かな。

 内桧岳へのルートであるが、最初は尾根歩きを最短化するために黒又第二ダムから西尾根往復を検討したが、地形図の等高線密度を見て断念。これでは下手をすると岩場が登場しそうだし、西向きの尾根でこの傾斜では今の時期は確実に残雪皆無で藪漕ぎが確定だ。こうなると足沢山、1084m峰経由東尾根を往復する以外に選択肢はないだろう。そうなると以下のような道順となる。

・国道252号線はまだ末沢ゲートで冬季閉鎖のため片道5kmの国道を歩く。
・JR只見線の鉄橋を利用して末沢川左岸に渡って足沢山から北に派生する尾根の末端に取り付く。
・送電鉄塔(標高490m)、674m峰、711.2m三角点、822m標高点、足沢山、1084m峰と進む。これは毛猛山へのルートと同じ。
・1084m峰で南西に派生する尾根に乗り移って内桧岳を往復。
・帰りは往路を戻る。

 おそらく合計で道のりは20km程度であり、その半分が国道歩きである。累積標高差は1000mに満たないため楽な部類と言えるが、それは藪が無かった場合である。所要時間と体力の消耗具合は全て残雪状況(藪がどれくらい出ているか)にかかっている。こればかりは登ってみないと分からないが、先週見た限りでは標高が低い場所ではほぼ期待できないだろう。ただしこのルートは足沢山までは夏道ができつつあり、雪が無くても足沢山くらいまではどうにかなるだろう。

 2週間前の「あおり山」では柔らかい雪がかなり減ってその下の古くてやや締まった雪が広範囲で顔を出していた。あれから気温が高い状態で推移しているし雨が何度か降っているので新雪は完全に消えて古い雪しか残っていない、いや、それどころか古い雪さえ溶けてしまって藪が出ている可能性の方がずっと高いだろう。この状況ではスノーシューどころかワカンの出番もないと考えられるため、今回はどちらも持たないことにした。これで大幅な軽量化となる。しかし、未踏である1084m峰〜内桧岳間の稜線の状況は全くの不明であり、リスクを考えて10本爪アイゼンとマジなピッケルは持つことにした。短い区間でも雪が付いてヤバい地形が現れた場合、これらが無いと突破できない可能性もある。雪の状態にもよるが、過去の経験で足沢山までならアイゼンもピッケルも不要だったように記憶している。

 今日は気温上昇が予想されるため、水は多めに持つことにした。私の場合、いつもなら水はほぼ消費しないのだが、今回は標高が低くて気温が高いこと、朝晩は気温が下がっても日中の気温がかなり上がる予想(下界では+25℃以上の場所も)のため、500t持つことにした。これは私にとっては真夏の北アルプス日帰りの2倍以上の量である。山の上で不足した場合でも雪を溶かせば水を得られる。どうせ気温が上がって水温も上昇するので、ペットボトルの中に雪を入れれば勝手に溶けるだろう。この他に暑さ対策として濡れタオル、扇を持つことに。これらも今シーズン初出動の装備である。

 先週に引き続いて大白川へと向かう。国道ゲートでは夜中に他にも車がやってきて安眠妨害されそうで、大栃山の道の駅の広い駐車場の奥地で仮眠。ここは静かに寝られて快適だった。翌日の夜中1時過ぎに起床して朝飯を食って出発準備を整えてから末沢ゲートへ移動。他に駐車皆無の広い路肩に駐車して午前2時半に出発。明るくなるまでに2時間以上あるが、国道歩きで1時間、足沢山への尾根歩きで1時間は真っ暗な中をLEDライトで行動だ。国道歩きは暗くても問題ないが、その後の道無き尾根歩きを暗闇の中はリスクがあるが、登りだったら斜面付点さえ間違えなければ勝手に尾根に乗るので問題ない。できるだけ気温が低く雪質がいい時間帯に高度、距離を稼ぐのが得策だろう。

 昨年の土崩山、こったが山の時の送電線巡視路入口(廃林道)を通過して茂尻橋を渡り、国道が大きく緩やかに左カーブしたら国道を離れて左側の雪原に入る。只見線は一段低い場所を通っているのでここからだと見えないが、冬枯れした草に覆われた急な法面を下るとライトに照らされた線路が登場。当然ながら線路上には雪は無く鉄橋の上にも雪は無かった。鉄橋には線路脇に人が通れるようなスペースが設けてあった。

 鉄橋を渡って斜面取り付きに到着。周囲はまだ真っ暗な時間帯であり、LEDライトの光では限られた範囲しか照らすことはできないため、マクロな地形を把握するのが難しい。一般的に尾根末端付近は緩やかな地形で尾根がはっきりしていない場合が多く、今回のようにライトの光だけで正確な尾根の真ん中を見分けるのは難しい。しかし、登りの場合は多少位置がずれても高度が上がって尾根が収束すれば自動的に尾根の中央に出られるため、あまり細かなことを考える必要はない。だからこそこの暗闇の時間帯に登ることを決めたわけだがその決断は正解で、椿藪の隙間を縫って急斜面を適当に登っていくと尾根地形に飛び出し、何となく道があるような気配だった。考えてみればこの上部に送電鉄塔があるので巡視路があるはずで、おそらくこの尾根に道が付けられたのだろう 。北向きの尾根だが標高が低いので雪はほとんど残っていない。

 結構な傾斜の尾根でブナの落ち葉が積もって非常に滑りやすく、雪が残っていた方が歩きやすいのではと思えるくらいだったが、傾斜が緩んで尾根幅が広がると残雪が登場して送電鉄塔が登場。ここは標高490m地点である。送電鉄塔付近で尾根が再びバラけてLEDライトが照らす狭い範囲だではどこを登ればいいのか分からないので適当に上がり、再び尾根地形らしき場所に達すると薄いながら踏跡らしき筋を確認できた。送電鉄塔より上には基本的に道は無いはずで、この道筋は残雪期に毛猛山を目指した登山者のものに間違いないだろう。ライトの光では時々見失いそうになる程度の濃さであるが、この標高ではまだ植生自体がそれほど濃くないので問題ない。

 一度尾根が明瞭化すればそれ以降はずっと尾根を追いかけるだけで良く、登りであれば自動的に尾根直上を進むことになるのでライトの光でも迷う心配はない。今の時期の日の出は午前5時過ぎであり、まだ日の出まで時間がある。高度が上がっても尾根に周囲に雪は全く見られず、道が薄くなる前に残雪が出てきてくれるのか心配になる。ここは豪雪地帯とは言え標高が1000mに満たないので、雪が無いのは当然と言えば当然か。

 標高711.2m三角点肩に到着。道端にある三角点周辺には雪はなく簡単に見つけることができた。この先は水平な尾根が続いて今回初めてまとまった残雪が現れたのでその上を歩いてみたが、気温が高いため雪の締まりがなくて足首以上まで踏み抜くことがあり、ロングスパッツを装着しない状態では登山靴に雪が入ってしまうため、急遽ロングスパッツを装着。ちなみに今回はロングコース+雪が落ちた藪で体力消耗が厳しいだろうと、この冬に愛用していた防寒長靴ではなく今シーズン初めて登山靴を履いている(笑) 長靴だったら雪が入ることはなかっただろうけど、登山靴の2倍以上の重さがあるので疲れるのは間違いない。なお、この区間は例年遅くまで雪が残っているようで、ここだけは雪が消えた場所ではこれまでより道が薄かった。

 平坦区間が終わって登りが始まると同時に残雪が消えて再び無雪の尾根歩きに変わり、踏跡を辿って登っていく。標高900m付近では透明な樹脂製のボトルが木にぶら下がっていたが、おそらく誰かの落とし物だろう。この他に軍手やハンカチの落とし物を発見し、これらは地面に落ちていたので手近な木の枝に縛ったり刺しておいたりした。

 標高930mを越えて左から大きな尾根と合流するが、まだここでも雪が出てこない。14年前はこの付近から左側斜面に残雪が現れたような記憶があるが、今は斜面のはるか下まで雪はずり落ちて使えない状態だった。もし先週コロナにかからなくてもここは雪が使えなかったであろう。標高970m付近で左にずり落ちた雪が尾根に接近したため部分的に雪の上を歩けたが、距離にして数10m程しかなかった。昔はこの付近まで上がると灌木藪が濃くなったような記憶があるが、今回はここでもこれまでと同じような踏跡の濃さが続いていた。おそらくマイナー12山に選定後に入山者が増えたこと、地球温暖化が進んで残雪期の雪解けが早くなって藪が出るのも早くなったことが要因だろう。このままいけば近い将来には夏道ができてしまうかも?

 標高1010mに達して一時的に尾根の傾斜が緩んで尾根幅が広がると同時に大量の雪が出現し、足沢山てっぺんまで繋がっているようだった。やっとこれで快適な残雪歩きが楽しめる・・・と思ったが、気温が高くて雪の締まりが悪く、コンスタントに足の甲程度まで雪が沈むので快適とはいい難い状況であった。それでも体に触れる灌木藪が皆無で周囲全体が雪に覆われていると吹き抜ける風の温度が低くて快適だ! もしかしたら今年はこのまま高温状態で推移して、朝方は冷え込みで固く締まった残雪期らしい雪質はアルプス等の高山以外は体験できないで終わってしまうかもしれない。なお、雪の上には微かにスノーシューの跡と思える形跡があるが、ほとんど判別できないほど微妙なものだった。ここのところ高温の日が続いて雪解けが急速に進んだ影響だろう。その他には足跡は皆無であり、少なくともここ数日の入山者はいなかったようだ。

 急だが広い雪面をジグザグを切って上がっていくが、ここまで歩いてコロナで寝込んだ影響がどの程度がはっきりしてきた。正直なところベストの体調ではないが、疲労の度合いはそれほどではなく内桧岳まで届きそうだ。もし疲れても時間はたっぷりあるので休憩は長時間確保可能で、私の場合は1時間くらい横になっていればかなり体力が回復する。今回は雪の上でも寝られるように銀マットをザックに入れている。

 雪原を登り切って久しぶりの足沢山山頂に到着。14年前の記憶はもう全く残ってはおらず、前回どうだったのかは過去の自分の記録を読み返すしかない。山頂はまだ雪に覆われたままであり、高い立木が皆無で展望は良好だ。今日は好天だが風がほとんど無いので空気の透明度が悪く、あまり遠方の山々は霞んでしまって見えなかった。西側で一番遠くに見えるのは北志賀高原の遠見山や台倉山付近で、その奥に見えてもいい後立山は見えなかった。空気の透明度が高い日ならば後立山からは爺ヶ岳〜白馬岳にかけて毛猛山が見えた記憶がある。

 近場では北に守門岳、東側に浅草岳が鎮座してどちらもまだ真っ白だ。浅草岳の手前に見える鋭いピークは前毛猛山であろう。あれも残雪期に登ったなぁ。その右手は村杉半島の山々のはずで、一番左側が横山でその右の尖ったピークが猿倉山、そのさらに右が大川猿倉山と西に派生する株倉山であろう。ここからだと村杉岳の丸い山頂は隠れて見えなかった。南には太郎助山、百字が岳、桧岳が高く、その右にはまだ真っ白な越後三山と続く。西には2週間前に登った「あおり山」や昨年登った高鼻山〜土崩山が見えていて、その背後は唐松山〜下権現堂山の真っ白な稜線である。北に目を向けるとこれまた昨年登った「こったが山」で、よ〜く見ると山頂北側直下の廃墟も判別できた。昨年は大型連休直前くらいに登ったので今よりも雪が少なかったなぁ。

 通常ならここでまず目が行くのは桧岳の雄姿だと思うが(ここからではまだ毛猛山は見えない)、私の目の先は当然ながら内桧岳である。ここからだと1084m峰付近の稜線が邪魔してまだ尾根全体が見えるわけではないが、中盤から後半にかけての尾根の様子が分かる。地形図だと1084m峰から緩やかに下って最後に登り返す地形であるが、実際には最低鞍部までに鋸の歯のように細かなピークがいくつもあり、その東面に雪が残っているようだ(西面は隠れて見えない)。1つ1つのピークは小さいが傾斜が急に見える個所もあり、1箇所は明らかに岩場になっている。さて、あれらを無事通過できるだろうか。こうなると残雪で藪を回避するよりも雪が完全に落ちて藪をホールドとして利用できる方がクリアできる確率が高いだろう。ぱっと見た感じではここからでは見えない西向きの斜面に雪は無さそうに見える。この尾根は全体的に北斜面側の傾斜が急なため、こちらから主に見える北斜面の雪はかなり少ないが、より傾斜が緩い南斜面側に雪が残っていて藪を回避できたらラッキーだ。

 まだ疲労は濃くないので休憩無しで出発。ここまで出発から3時間半が経過しているので、内桧岳到着は5時間くらいかな。足沢山から1084m峰への前半の緩傾斜+広い稜線の区間はたっぷりの残雪で藪は皆無。稜線の東側には2重山稜気味の地形が長く続いてテントを張るのに最適な場所が広範囲に広がっている。これなら西寄りの風は完全にブロックできてしかもほとんど平坦である。確か前回歩いた時にもこの付近でテントを見たような。私はこの時は時間があったので百字が岳のてっぺん付近で幕営したが、そこよりも条件はいいだろう。

 さらに進んで標高1080m付近から尾根幅が狭くなると雪が落ちて灌木藪が出てしまっていた。ここでもその藪の中には踏跡が見られるが、足沢山より手前と比較して薄くて灌木の張り出しがきつく藪漕ぎ状態だ。14年前に登ったときにはここで藪漕ぎした記憶はなく、おそらく雪がつながったままだったのだろう。鞍部を通過して登り返しに入り、標高1070付近で東にずり落ちていた残雪が尾根に接近したため、斜面の藪を漕いで残雪に乗ってこれ以降の藪を回避できた。

 1084m峰は岩峰らしくてっぺん付近は灌木が無く地の石が見えているが、その東斜面にはまだ雪が残っているので毛猛山を目指す際にはここには寄らずに東を巻くのが一般的だろう。しかし今回の目的地の内桧岳は1084m峰から分岐しているので1084m峰を越える必要がある。てっぺんの北側直下はモロ岩場で登るのは危険なため、残雪を伝っててっぺんの南側直下に出て灌木藪を漕いで1084m峰てっぺんに立った。

 尖ったてっぺんはハゲて砂礫の地面が出た状態で、周囲の灌木藪は矮小なため視界を遮るものは何もない大展望。しかし目が行くのは内桧岳の稜線のみで、遥か彼方のきれいな三角形の残雪をまとったピークがおそらく山頂であろう。そこまでの尾根は一直線に重なり合っているので様子がいまいち分からないが、どうやら残雪はほとんど期待できそうにないことは分かった。尾根途中で左(南)に張り出した灰色の岩のピークが不気味だが、見える範囲では危険個所はそこだけのように思えた。

 ここで不要な荷物をデポして軽量化。既に気温が上がって半袖で行動しても寒さは全く感じず快適な温度であり、防寒装備はどう考えても不要だろう。雨具も同様。この残雪状況なら銀マットも不要だろう。細かなものは防寒着に包んでおくが、無風なので飛ばされる心配はないだろうと考えつつも木の根元で風をブロックできるような場所を確保した。水は小さいペットボトルだけ持っていくことに。さて、山頂までどれくらい時間がかかるだろうか。もし藪が無ければ15分程度の距離だと思うが、ほとんど登られた記録が無い領域なので予想がつかない。ここからが本日の核心部だ。

 1084m峰からの下り初めは尾根直上に溝のような筋があり、もしかしたら獣道かと思えるようなものだが、すぐに藪に溶け込んで消えてしまう。しかしこの尾根には切り口がきれいな切り株があったり境界標石があったので、少なくとも人の手が入ったことがあるのは間違いない。まあ、まともな道を作るほどのきれいな刈り方はしなかっただろうけど。尾根の右手(北斜面)は概ねどこも傾斜が急で雪は残っていないが、南斜面は稜線からかなり離れた場所に雪が残っている。もしこの尾根で転落するなら南側の方が安全である。尾根直上はこれまでと同じく矮小な灌木藪が主体で、尾根直上なら藪が立っているので比較的藪漕ぎはしやすい部類と言えよう。堤防のように尾根直上のみ雪が残った区間があるが距離は短く、あまりありがたみを感じない。雪が残る場所は主に微小ピークへの登りで、下りでは雪は無かった。尾根の凸凹が無かったらおそらくずっと長い区間で雪が残っていただろう。

 稀に頑強な灌木藪があるが、ほとんどは迂回せず手でかき分けて進めばいい程度の藪が続く。面倒なのは背の低い照葉樹と低い位置から枝を伸ばした五葉松であるが、これらは少数派である。微小ピークは遠めに見たよりも危険はなく、淡々と越えていけば良かった。ただし、遠くから見て尾根の南に張り出した灰色の岩のピークの下りは急で、上から見たときは直感的にヤバいと感じだが、急斜面の藪に突入して尾根の続き具合を確認すると距離は短いしちゃんと尾根が繋がっていた。実際に下ってみても藪に掴まれば問題なく通過できた。

 この後もいくつかの微小ピークを越えていき、最低鞍部の1010m鞍部手前の最後の小ピークの西側が上から見るとこれまたヤバそうに見えた。ピーク西側直下は大きな立木の根元が崩れて小規模な崖状になっていたため南側を僅かにバイパス。ここが急傾斜だが距離は数mと短くて地面の凸凹や藪があるので手がかり、足掛かりに困ることはなかった。もしここに一面の雪が付いていたらこれらの手がかり、足掛かりが無くて万が一の滑落時を考えるとロープによるバックアップが必要だと思うが、雪が無い時期なら問題ない。往路では気付かなかったがここには古いフィックスロープが残置されていて、ここを訪問する人はおそらく年間数人程度だと思うがゼロではないことが分かった。

 1010m鞍部の西側は傾斜は急だが尾根幅が広がって下部には残雪がまだあったので、できるだけ雪を長く利用してから矮小灌木の生えた広い斜面の藪が薄い箇所を上がって尾根に復帰する。1050m峰手前で一部藪が濃くて突破に手間取るが、原因は一株のみなので許容範囲だろう。

 1050m峰てっぺんは展望がいい場所で、ここからすぐ西に見えている三角形の残雪をまとったピークが内桧岳山頂であろう。1050m峰と山頂との間の鞍部から山頂直下にかけては珍しく広範囲に残雪を纏ったままで、藪を回避できそうだ。その残雪に乗って可能な限り残雪を伝って先に進み、雪が切れたらすぐ上部に見えている別の残雪に灌木を漕いで乗り移る。これで山頂までもう藪はないかと思いきやで、山頂手前で尾根が細くなって雪が落ちてしまっていた。しかし山頂までの距離は短いので問題なし。

 最後は山頂部を覆う残雪に乗って内桧岳山頂に到着! 三角点が無いピークなので山頂部を雪が覆ったままでも苦労はなく、逆に雪で高度がかさ上げされて展望がいいのが嬉しい。もっとも、山頂付近は矮小な灌木しかないので完全な無雪期でも展望は楽しめそうだった。ここからだと南側の桧岳が盟主であり半分崖のような北斜面の急斜面が壮絶だ。今日は気温が高いので10分毎くらいに底雪崩の轟音が響き渡る。音からして大規模な雪崩のように思えるのだが、その方向を見ても雪が谷を落ちていく様子は一度も見えなかった。

 北側は「こったが山」の稜線で、ここからだと山頂直下の廃屋群は影になって見えない。東は1084m峰が遠い。帰りもあのピーク群を越えて藪漕ぎなので、往路とほとんど同じ時間がかかるだろう。ただし、ルートの様子が判明したので安心して歩けるが。結局、ここまでの間でアイゼンを出す場面は皆無で、ピッケルはあった方がいいが必須というほどの危険地帯は無かった。マジなピッケルではなく軽ピッケルで良かったなぁ。

 ここまで5時間連続で歩き続けて藪漕ぎまでやって疲れたので山頂で大休止。幸い、山頂の雪が切れた南側境界が草付きの平坦地で昼寝に最高だった。ただし、日差しが強くて風が無いので暑い! 麦わら帽子を持ってきて正解だった。藪で引っかかってちょっと鬱陶しかったが、それ以上に暑さ除けに役立ってくれた。そう言えば今シーズン初めて日焼け止めを使用。雪の残っている区間は短いが日差しだけでも日焼けするだろう。暑かった影響もあってかなり水を消費。ペットボトルの水が半分程度の段階で雪を突っ込んで「水増し」したがそれでも不足気味で、雪だけになったペットボトルを雨蓋の上部に仕込んで太陽熱で溶かすようにした。しかし藪漕ぎの影響で雨蓋がズタズタに避けて切れ目からペットボトルが落ちてしまいそうで、応急処置でテーピングを貼っておいた。これでも途中で喉が渇いたので残雪を口にして水分補給した。

 名残惜しいが休憩を終えて出発。さすがにここには2度と来ることはないだろう。往路の経験でピッケルの出番は無いと分かったので最初からザックに括り付けたが、これはこれで灌木藪に引っ掛かるので面倒ではある。帰りはルートの情報量が増えて精神的に余裕ができたので写真を多めに撮影しながら各ピークを越えていく。1084m峰最後の登りは尾根南側の少し離れた残雪を利用してみたが、尾根上の藪がそれほど濃くないので短い雪の上がお得だったかどうか自分でも疑問である。

 最後は急な短い登りで1084m峰に到着。立木が無く裸の山頂で周囲に残雪も無いので暑い! 本格的に休憩するなら雪がある足沢山の方が良さそうなので短時間の休憩で出発。ここでデポした荷物を回収したのでザックが重くなったが、この先の藪漕ぎはたかが知れているし、足沢山を越えれば基本的に下り一辺倒になる。

 ピーク東側の残雪帯に降りると新しい一人分の足跡が毛猛山方面へと延びていた。私と時間差がどれくらいあるのか読み取るのは困難だが、百字が岳へと続く稜線上に動く人影を探したが見当たらなかった。しかしこの距離では人間など芥子粒ほどにも見えないだろうから探すのは無謀であろう。

 残雪帯が終わって灌木藪の尾根に乗り移り、標高1080m付近で再び雪に乗って本日二度目の足沢山山頂到着。雪の上にザックを転がして大休止。東に延びる残雪の尾根上には人の姿は見えない。残雪期限定の毛猛山だからこそこの時期に目指す登山者が少なからずいるはずで、幕営組ならこれからに時間帯に登ってきてもおかしくないはず。まあ、登山者がいると言ってもそもそも登山道が無い藪山はニッチな市場であり、多くの登山者が押しかけるような山ではないが。

 休憩を終えて下山開始。今日は風が無いので日差しが強くて暑い! 帰りは濡れタオルを首に巻いて片手には扇で顔を扇ぎながらである。これは私の夏のアルプススタイルで、残雪期にここまでやるのは珍しい。おまけに頭には麦わら帽子で上半身は半袖姿で、傍から見れば完全に夏山スタイル。本当ならば半ズボンになりたいくらいだが、さすがにこの時期ではまだ準備していない。

 残雪帯を快速で下ってもうすぐ無雪地帯へ入るところで大ザックを背負った男性に遭遇。当然ながら毛猛山狙いで幕営とのこと。今日、明日と天気が安定して晴れるのでテント泊は楽しいだろう。冷え込みもそれほどないだろうが、雪質を考えると冷えた方が楽に歩けていいか。

 雪が消えたところでロングスパッツを脱いで多少の放熱効果アップを図る。もうこれより下では靴に雪が入る心配はしなくいい。標高930m肩で尾根が左に分岐する箇所は要注意だが、実際には明瞭な踏跡が正しい尾根に続いているので迷うことはなかった。往路では気付かなかったが標高770mと標高640mの左に枝尾根が分岐する箇所では正規の尾根と同等の濃さの短い踏跡があったり、道は無くても藪が薄くて引き込まれそうになったりして要注意箇所だった。尾根が分岐する地点では念のために地形図を確認すべきだろう。この尾根は踏跡は割と明瞭であるが目印はほとんど見なかった。

 最後のランドマークの送電鉄塔に到着。ここで安心して地形図をよく見なかったのがミスの始まりで、このまま北西に延びる主尾根を直進すれば鉄橋に到着すると思い込んだまままっすぐ下ってしまった。こちらには先人の足跡が無かったのが気がかりだったが、尾根は下部でばらけているので問題なかろうとここでも地形図を見なかった。それに太いブナにはピンクリボンの目印が点在して、雪で隠れて見えない地面が半分くらいあったが、出ている地面には道らしい明瞭な筋が確認できたので安心してしまった。

 そのまま雪が残った広い谷筋を下っていくが、途中でピンクリボンの目印が見当たらなくなってしまった。雪があるので道筋が右に逸れたのか左に逸れたのか不明だが、このまま下れば支流と末沢川との合流点で鉄橋に出るはずだとそのまま下って行った。傾斜が無くなって平坦な雪原に出て深い沢に沿って下流へと向かおうとすると、末沢川本流にあるはずの鉄橋が無い! ここで地形図を広げてルートミスが判明。私が下った尾根の末端は鉄橋よりも西側に出てしまい、末沢川本流を上流方面へ迂回しないと鉄橋に到達できない。残念ながら本流側の斜面は傾斜が急で谷が切れ込んだ箇所があり、トラバースは不可能であった。こうなったら安全な高度まで登り返してトラバースするしかない。最後の最後で大チョンボであった。安心した後が一番危ない。

 小尾根に取り付いて登り返しにかかるが藪が濃く、右手の斜面に雪が現れたところで雪に乗って藪を避ける。トラバースしたい左手斜面は手前の小尾根が邪魔で見えないので、小尾根に取り付きやすい斜度と植生に変わったところで尾根に移って先の様子を確認すると、どうやらこのままトラバースできそうな地形で一安心。まだ尾根と谷を一つずつ越える必要があり谷は見えないので安心はできない。一つ目の谷をトラバースして小尾根に乗り二つ目の谷を見下ろすと幸いなことに険しい地形はなくこのままトラバース可能。おそらく谷の向こうに見えている尾根が目的の尾根のはずだ。

 トラバースを終えて尾根に乗ると今度こそ明瞭な踏跡が登場して正しい尾根に乗った。ここはそおらく往路は暗くてもっと東側を歩いていたはずだ。尾根末端で傾斜が緩むと雪が覆うようになるが、おそらくはこの尾根上の道は鉄橋の東端が入口になっているようだった。登りでは鉄橋を渡り終わった直後に右から流れ込む沢沿い上流方向に10m程度進んで尾根に乗るのが正解だ。

 余談であるが、復路で送電鉄塔から北西に落ちる尾根上にあった道こそ、もしかしたら本当の送電線巡視路だったかもしれない。と言うのは往路の尾根よりも確実に道は良好であったから。推測であるが、あの道は下りついた支流を渡って対岸へと続いていて、今回利用した鉄橋よりも下流にある吊り橋(地形図に表記がありグーグルマップの衛星写真でも橋が確認できた)に繋がっているのではなかろうか。支流の対岸にも送電鉄塔があるので、そこへの巡視路入口が吊り橋だろうと思う。これならJRの鉄橋を使わずにアクセスできるので安全性が高い。おそらくJRに正式に鉄橋の利用を申し込んでも安全上の理由で断られてしまうだろうから、人間が通れる程度の独自のルートを作ったのだろう。この予想が正しいかどうかは実際に吊り橋を渡ってその先の道を辿ってみるしかないが、私にはそこまでやる気力は無い。もし予想が当たっていればJRの鉄橋を使わずに済むので、堂々と登ることができる。

 只見線の大白川駅の時刻表は事前に調べてあり、次の列車通過は上下方向とも午後2時前後。今の時刻は正午過ぎであり全く問題なし。鉄橋を渡り終わってすぐに右手の冬枯れした斜面東端を登って雪に覆われたままの平地に出れば、そのすぐ先が国道252号線である。暑い日差しを避けて休憩するためにスノーシェッド入口目指して雪原を横断し、スノーシェッド入口で休憩。ちょうど雪解け水が天井から落ちてきているのでペットボトルに補給。この後の国道歩きでは斜面のあちこちから雪解け水が流れ込んでいるので、水の補給は最低限で大丈夫。ここで最後の昼飯を食った。スノーシェッドは風が吹き抜けるため日影では寒いくらいであったが、日向ではやっぱり暑かった。

 さあ、最後の国道歩き5km。帰りは真昼間で明るいため、国道脇に春の花を探しながらのんびり歩いた。雪解け直後のこの時期ではショウジョウバカマ、カタクリ、キクザキイチゲ辺りがよく見られる花で、スミレもあったが私には細かな種類は判別不可能だが、距の色(花と同じ薄紫色)からしてタチツボスミレ辺りが順当であろう。スミレはどれも非常に似た花であり、ちょっとくらいの勉強では判別できない。キクザキイチゲは真っ白な花と薄い紫の花と2種類あるが、分類上は同じ種類である。カタクリは日当たりのいい斜面では大群落を構成していた。

 たまに地形図を取り出して現在位置を確認しながら歩いたため、ゲートまでの残り時間が予想できたので精神的には良かった。除雪の工事業者の車だろうか、歩いている途中でゲート方面に猛スピードで下っていくワンボックス車に追い抜かれた。山の上から見た感じではかなり除雪が進んでいて、近いうちに県境のトンネルまで達するのではなかろうか。

 無事に末沢ゲートに到着。出発時は私の車だけだったが、今は私の車の他に3台あった。1台は足跡だけ見た毛猛山へ向かった単独行者、1台は大ザックの幕営男性だろうが、もう1台の主は不明。車の中で着替えて昼寝を挟みつつ車載PCで記録を付けた。


 コロナ明け直後の藪漕ぎを含む長時間行動はかなり疲労し、翌日の庄司山はごく軽い山だったが疲れた! 私が北アルプスの日帰りをやる中で最もきつい鹿島槍南峰/北峰と比較しても、今回の方がきつかった。その後も数日間は疲労が取れない状態で、次の週末の高倉山でも足が重くて「通常営業」まで回復しなかった。これはコロナの影響なのか、それともただ単に内桧岳のコースが厳しかっただけなのかは不明で、少し長い目で観察する必要がありそうだ。

 疲れはしたが念願の内桧岳登頂に一発成功で非常にうれしかった。この分だと今年登った山の中で最も充実した山となりそうだ。

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ